企画セッション


10月29日(木) 13:30-17:00 第2会場

市民講座「地域医療のイノベーションとICT(情報通信技術)-災害時にも対応できる医療情報を-」

要旨 阪神・淡路大震災や東日本大震災では、多くの医療機関で診断記録が喪失し、服用中の薬剤や治療経過、検査値などのデータが失われました。このために避難所 等における患者への医療対応が困難になったという事実があります。苦い経験を踏まえて、最新の情報通信技術を用いて診断記録を含む個人の健康情報を自分自 身の手で管理し、健康維持に役立てる仕組みについて講演します。また、我が国においては歴史的に類を見ない少子高齢化が進行しています。2025年には全 人口の35%以上を65歳以上の高齢者が占めると推測されます。高齢者においては、脳血管疾患、虚血性心疾患、癌、糖尿病、骨粗鬆症などの生活習慣病の患 者が増加しており、生活習慣に加えて、一人ひとりが持つ遺伝子の違いから、薬効と副作用が生じます。このような一人ひとりの遺伝子の違いに応じて適切な薬 を処方する「個別化医療」を実現するためには、薬物の副作用に関係する遺伝子の有無を診断し、薬物療法の安全性を向上させるための個人向け健康情報管理シ ステムの整備が緊急に求められます。「個人向け健康情報管理」の現状の問題点と将来展望について議論できるオープンな場を提供します。

石川 智久 (NPO法人地方再興・個別化医療支援)
「妻のガン闘病から学んだこと:個別化医療の重要性」
北岡 有喜 (国立病院機構京都医療センター)
「個人向け健康医療福祉履歴管理(PHR)サービス 「ポケットカルテ」 -臨床研究基盤としてのこれまでの取組と今後の展開について-」
岡﨑 光洋(スマートヘルスケア協会/北海道大学)
「”あなたをよく知る手帳”お薬手帳の効用、電子化でもっと活用!」
塚原 祐輔 (理研ジェネシス)
「遺伝子検査・体質に基づく医療と健康管理」


10月29日(木) 13:00-16:55 第3会場

バイオインフォマティクス研究者・技術者のキャリアを考えるセッション

セッション1

13:00-13:05 趣旨説明 阿久津 達也、松田 秀雄

要旨 このセッションでは、ベンチャー、IT系、製薬系など多様な企業において第一線で活躍されている講師の方々に、企業におけるバイオインフォマティクス関連 研究者・技術者のキャリアの実例や可能性を紹介していただきます。特に、どのような人材を望んでいるか、どのようなキャリアパスが考えられるか、どのよう な研究開発項目があるか、など大学院生や若手研究者が将来のキャリアを考える上で参考になる事柄を中心にご講演いただきます。大学院生や若手研究者の方々 はもとより、学生の進路に関してより多くの情報を得たいと考えている教員の方々まで、数多くの皆様のご参加をお待ちしています。特に、関西地区では初めて の開催になりますし、講演者も増え内容もより充実したものになっておりますので、以前に参加された方も是非、お越し下さい。

13:05-13:30 協和発酵キリン株式会社 吉田 哲郎

協和発酵キリンにおけるバイオインフォマティクス研究者への期待

要旨 創薬研究の様々なステージでバイオインフォマティクスの重要性は増してきています。本講演では協和発酵キリンにおけるバイオインフォマティクスの活用の現 状について紹介し、将来予想についての私見を述べます。また、バイオインフォマティクス研究者の製薬企業における考えられるキャリアパスについても紹介し ます。

13:30-13:55 大日本住友製薬株式会社     中川 博之

大日本住友製薬で活躍が期待されるバイオインフォマティクス研究者

要旨 近年の創薬研究ではバイオインフォマティクスの必要性がますます高まっており、髙い専門性を持つバイオインフォマティクス研究者が欠かせません。そういった研究者が活躍しうる場面、期待される役割、強みとなる特性、将来のキャリアパス等、自身の経験も交えてご紹介します。

13:55-14:20 株式会社キアゲン 宮本 真理

グローバル企業での仕事内容とキャリア形成

要旨 博士号を持ち、グローバル企業で、そのサイエンスのバックグラウンドを活かしつつ仕事をすることについて自身の経験と各国で博士号を持ち活躍する同僚達の 仕事内容を交えて紹介します。またグローバル企業でキャリアを伸ばしていくという事についてチャレンジングな点とそこから身につけられるスキルについても お話します。

14:20-14:45 アメリエフ株式会社 山口 昌雄

プロのバイオインフォマティクス研究者/技術者になるために必要なこと

要旨 日進月歩のバイオインフォマティクス分野において、周囲から必要とされるプロの人材になるために今すべきことをご紹介します。

セッション2

15:00-15:25 タキイ種苗株式会社 遠藤 誠

野菜、花の新品種開発におけるバイオインフォマティクスの役割

要旨 タキイ種苗㈱はこれまでに野菜で1,500品種、草花で500品種を開発してきました。それは、栽培される地域や時期に応じた気候・土壌条件に最も適した 品種が求められているからです。ただし、1つの品種を開発するには約10年という長い年月を要します。本講演では野菜、花の新品種開発におけるバイオイン フォマティクスの利用と求められている役割をご説明します。併せて、実際に野菜の品種開発に携わっている担当者の経験と実際の研究業務事例を交えて、バイ オインフォマティクス研究者への期待も紹介します。

15:25-15:50 三井情報株式会社 小川 哲平

ICT企業から見たバイオインフォマティクス~MKIの取り組み~

要旨 MKIのバイオインフォマティクス部門の業務や、ICT企業目線で求めるバイオインフォマティシャン像について紹介いたします。

15:50-16:15 イルミナ株式会社 癸生川 絵里

“バイオインフォマティクス”の仕事について 2015

要旨 “バイオインフォマティクス”に関わる仕事について、外資系企業の日本法人である弊社で働く実サンプル例(略歴等)をご紹介しながらお話しいたします。少しでも皆様のイメージを明確にするご参考となりましたら幸いです。

16:15-16:40 塩野義製薬株式会社 六嶋 正知

シオノギの研究所がバイオインフォマティシャンに期待すること

要旨 近年の創薬研究では、各種オミクス技術やスクリーニング技術の進歩により、膨大な生物学的データを解釈するバイオインフォマティクスの重要性が益々高まっ てきています。本講演では、シオノギ製薬の研究現場でのバイオインフォマティクスの活用シーンや、創薬研究において求められるバイオインフォマティシャン の人材像について、現場マネージャーの立場から紹介いたします。

10月29日(木) 16:00-17:30 第4会場

質量分析インフォマティクスとデータベース

オーガナイザー:
吉沢明康(京都大学化学研究所)
河野信(ライフサイエンス統合データベースセンター)
山田一作(野口研究所)
木下聖子(創価大学)

セッション要旨 オミックス科学のデータ計測では、NGSが標準的な測定手段となりつつある。しかし研究対象によっては、NGSで「測定できるもの」と、研究で「必要とさ れるもの」の間にギャップが生じるケースがある。例えばタンパク質は、アミノ酸配列に翻訳されてから行われる翻訳後修飾を考慮に入れなければ、本当の機能 について理解することは難しい。また糖鎖は、微細な構造の相違が機能に反映されるため、糖転移酵素の種類だけでなく、実際に生成された糖鎖の構造について 正確に知ることが必要である。代謝化合物についても、責任酵素だけでなく、実際に生成している化合物を探知しなければ、代謝活動について正確な描像は得ら れない。
これらのギャップを埋める測定手段としては、通常、質量分析法が用いられる。特にメタボロミクス、グライコミクス、プロテオミクス分野では、NGSよりも 寧ろ、質量分析装置が主要な計測装置になっている。しかし、質量分析データに基づくバイオインフォマティクスは依然として発展途上の段階であって、特に日 本での研究活動は極めて限られてきた。
今年2015年から、JST統合化推進プログラムにプロテオーム・データベース計画が採択され、日本で唯一、網羅的なデータベースが存在していなかった最 後のオミックス分野で、統合的なデータベースの構築が始まった。そこで我々は、これを機に「質量分析法を主要計測手段として用いるオミックス」即ちメタボ ロミクス、グライコミクス、プロテオミクスの3分野について、バイオインフォマティクス研究の「最初の一歩」であり、かつ「最後の一歩」でもある「データ ベース」についてのBoFセッションを企画した。
本BoFセッションを機に、「質量分析データの解析」とそのためのバイオインフォマティクスについて、興味と関心を抱く研究者が一人でも増え、新しい研究分野の開拓につながっていくことを期待したい。

16:00~16:05 セッション趣旨説明

16:05~16:30 有田正規(遺伝学研究所)「メタボロームデータベース:課題と対策」

要旨 世界各所のメタボロームデータベースは大きく分けてリポジトリとリファレンスに分けられる。一般に生命科学データベースはスキーマをフレキシブルに変化さ せていく必要があり、維持管理者にとって頭の痛い問題である。本講演ではMassBankやLipidBankといった息の長いデータベースを実例に、メ タボロームデータの特徴を紹介する。またバイオインフォマティクスの人向けにデータの特徴や未解決問題についても紹介する。

16:35~17:00 山田一作(野口研究所),木下聖子(創価大学)「糖鎖研究における質量分析」

要旨 質量分析技術の進展に伴い微量サンプルを用いた糖鎖構造解析が可能となり、糖鎖研究は飛躍的に発展し、様々なデータベースやツールが開発されてきた。セッションでは、質量分析による糖鎖構造解析および糖鎖分野におけるデータベースについて発表議論したい。

17:05~17:30 杉山直幸(京都大学)「大規模プロテオミクスのための解析ワークフローと統合データベース (jPOST)」

要旨 近年の質量分析計の発展に伴い、プロテオミクスによるタンパク質の大規模解析の網羅性が飛躍的に向上した。
本発表ではプロテオームの完全解析に向けたデータ解析ワークフローの開発と、タンパク質のリン酸化修飾に焦点を当てたシグナル伝達解析について議論する。また、現在開発を進めている統合プロテオームデータベース(jPOST)についても合わせて紹介したい。

10月29日(木) 17:00-18:30 第3会場

「ゲノムは個人情報?どのように扱うのが適切か?」
-個人情報保護法改正に伴う遺伝情報の取り扱いに関する意見交換会ー

オーガナイザー:荻島創一(東北大)、片山俊明(DBCLS)、清水佳奈(産総研)
ゲスト:鈴木正朝先生(新潟大)、高木浩光先生(産総研)

要旨 個人情報保護法改正法案が成立し、「個人識別符号」が個人情報として取り扱われることになった。今後、関連する政令の制定により個人識別符号が具体的に何 であるのかが決められるが、ゲノムを含む遺伝情報がこれに含まれる可能性がある。仮に、遺伝情報が個人識別符号に含まれることになれば、ゲノム研究の現場 におけるデータの取り扱方法に大きな影響を及ぼす可能性がある。本セッションでは、個人情報保護の観点から遺伝情報が現状、どのような位置づけであるのか を確認するとともに、遺伝情報が個人識別符号に含まれた場合のメリット、デメリットなどについて議論を深める。特に、研究を後退させない(あるいは、さら に促進する)ためにはどのような取り扱いが望ましいのかを議論したい。日本バイオインフォマティクス学会では本件に関してワーキンググループの設立を準備 しており、本セッションで得られた意見は、当該ワーキンググループで取りまとめの上、所定の手続きを経て日本バイオインフォマティクス学会からの提言とす る予定である。
当日は、個人情報保護法の第一人者の鈴木正朝先生(新潟大)、高木浩光先生(産総研)にゲストとしてご参加いただき、法学の観点で、バイオインフォマティクスの観点でどのような問題が生じるのかを共有したい。

10月30日(金) 13:30-17:00 総合研究実験棟 CB207

第19回バイオメディカル研究会
「人工知能のバイオメディカル応用」

プログラム ■日 時: 平成27年10月30日(金) 13:30~17:00
■場 所: グランフロント大阪 Vislab・京都大学宇治キャンパス(生命医薬情報学連合大会2015年大会にて中継)
■主 催: 日本バイオインフォマティクス学会・関西地域部会
■共 催: 公益財団法人都市活力研究所
■後 援: 大阪府、NPO法人バイオグリッドセンター関西、NPO法人近畿バイオインダストリー振興会議
■プログラム:
13:30 開会挨拶
13:35 講演1(宇治)「医薬ビッグデータと機械学習によるインシリコ創薬」山西 芳裕 先生(九州大学生体防御医学研究所・高等研究院)
14:15 講演2(大阪)「Watsonの医療応用」溝上 敏文 先生(IBM)
14:55 休憩
15:10 講演3(大阪)「オミックスビッグデータ解析と人工知能による個別化・先制医療」角田 達彦 先生(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
15:50 講演4(大阪)「人工知能に向けた富士通研究所の取り組み」岡本 青史 先生(富士通研究所)
16:30 総合討論
17:00 閉会挨拶

10月30日(金) 14:00-15:30 第4会場

糖鎖インフォマティクスハンズオンセミナー
〜糖鎖インフォマティクスの世界へようこそ〜

木下聖子(創価大学)
奥田修二郎(新潟大学)
山田一作(野口研究所)

スケジュール:
1. 糖鎖科学の入門(15分)
a. 糖鎖遺伝子
b. 糖鎖認識タンパク質
c. 糖鎖機能
d. 糖鎖解析
2. 講習会(60分)
a. データベース:JCGGDB、UniCarbKB、GlycoEpitope、GlycoProtDB、GlyTouCan、他
b. ソフトウェア:GlycanBuilder、GlycoWorkbench、GRITS Toolbox、RINGS、他
3. ディスカッション(15分)
a. ゲノム、プロテオーム、メタボロームとの連携について

要旨 糖鎖とは生命の第3分子として知られ、生体内の様々な細胞の表面を飾り、細胞の「顔」として認識されている。ウィルス感染や細胞のがん化にも関わってお り、近年は生物学的な機能も少しずつ明らかになってきた。糖鎖インフォマティクス分野においては、糖鎖関連データベースやソフトウェアが世界中の研究者に よって開発されつつある中、本年6月には国内外20名以上のインフォマティクス専門家で構成されるGlycoinformatics Consortium (GLIC)の設立に至った。
本セッションは、糖鎖科学の入門講義からスタートし、糖鎖関連遺伝子や糖鎖認識タンパク質、糖鎖の生物学的機能、さらに質量分析などの技術が糖鎖研究に応 用された例も紹介する。続いて、現在世界中で開発されている糖鎖関連のデータベースや糖鎖解析の為のソフトウェアについてハンズオンセッションを通して紹 介する。最後のディスカッションでは、糖鎖科学とその他のゲノミクスやプロテオミクス研究との関連性を議論し、今後のライフサイエンス研究の発展に繋がる ような課題について参加者と検討したい。

10月30日(金) 15:45-18:30 第2会場

若手合同セッション「生命・化学・医療情報学は連携できるのか?」

15:45-15:50 オープニング(このセッションの趣旨説明等)
15:50-16:10 日笠幸一郎 先生(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)
16:10-16:30 村上隆介 先生 (京都大学医学部附属病院産婦人科)
16:30-16:50 幡生あすか 先生(大阪大学薬学部)
16:50-17:00 休憩(10分間)
17:00-17:20 荒井ひろみ 先生(東京大学情報基盤センター)
17:20-17:40 小林宏彰 先生(株式会社日本医療機器開発機構)
17:40-18:00 八谷剛史 先生(岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構)
18:00-18:30 パネルディスカッション

オーガナイザー
・小寺 正明 (東工大 生命理工学研究科)
・J.B. Brown (京大 医学研究科)
・金子 弘昌 (東大 工学系研究科)
・孫 建強 (東大 農学生命科学研究科)
・大上 雅史 (東工大 情報理工学研究科)
・生命情報科学若手の会

セッション要旨 医療現場において診療情報、医療計測データなど膨大なデータが常に生み出されていますが、その分析をいかにリアルタイムかつインタラクティブに実施し、必 要とする医療関係者に提供するかが求められており、その実現には情報学的な支援が不可欠です。また、従来の臓器や組織レベルの検査から、今後は細胞やゲノ ム、分子レベルの検査へ拡大し、データの質、量ともに大きく変化していくと考えられます。これらの膨大なデータ、詳細なデータを効果的に蓄積・共有・利用 するには、医療現場と生命情報学や化学情報学の連携が欠かせませんが、たとえばオープンデータの考え方などの”文化”的相違により、必ずしもうまく行って いるとは言えません。本セッションでは、生命情報学と化学情報学、そして医療現場から若手研究者をお呼びし、最新の知見をお話しいただくと同時に、今後の 連携体制のあり方について参加者の皆様と一緒に考えていきたいと考えています。
日笠幸一郎(京都大学大学院医学研究科附属ゲノム医学センター)山田亮, 松田文彦.
「ヒト生命情報統合研究に向けた大規模ゲノムコホート事業の推進」

要旨 臨床症状が現れる前の発症前診断、究極の医療とも言うべき発症前治療を実現化するためには、大規模集団を対象に長期の追跡をおこない、継続的に得られる生 体分子の詳細な分析・解析に基盤を置きつつ質の高い疾病罹患情報や環境・生活習慣情報と統合した解析が不可欠である。このような、健康を遺伝子や細胞レベ ルに限らず、「分子を通して身体全体で見る」新たな予防医学のアプローチは、従来の疫学研究とは全く異なるもので、多くの研究分野や産業界の協力で推進す べき学際的研究である。京都大学ゲノム医学センターでは、ヒト生命情報統合研究のモデルケースとして、2005年より滋賀県長浜市で地域住民を対象にゲノ ムコホート研究を進め、10,082名の参加者について、環境・生活習慣調査、生化学・血液学検査などの情報や、SNPアレイを用いたゲノム多型の網羅的 解析を実施している。また、生命情報統合解析の試験研究として、300人の市民を対象にSNP解析、Exomeシークエンシング、白血球RNAの発現解 析、代謝物の網羅的解析、FACSによるリンパ球の表現型解析など、統合オミックス解析を実施した。これらの解析事例、及び、情報を統一的に管理・運用・ 公開するために構築しているデータベースの概要について紹介しつつ、ヒト生命情報統合解析の戦略について議論したい。
村上隆介(京都大学医学部附属病院産婦人科), 松村謙臣, 日笠幸一郎, 堤孝信, J.B.Brown, 鎌田真由美, 濱西潤三, 山口建, 安彦郁, 馬場長, 越山雅文, 山田亮, 松田文彦, 奥野恭史, 小西郁生, 万代昌紀.
「臨床医学研究者が利用できるオミクス解析パイプラインの構築にむけて」

要旨 近年大量のオミックスデータが公開されているが、その結果を臨床医に解釈可能な形で提示する仕組みは開発途上である。我々は卵巣癌臨床検体の遺伝子発現マ イクロアレイの公共データを用いて化学療法感受性予測スコアを独自に作成した。まず卵巣癌の生検組織後のパクリタキセル、カルボプラチン単剤化学療法の反 応性を調べたデータセット(GSE15622)を基に治療感受性シグネチャーを抽出しssGSEAを用いてタキサンおよびプラチナ製剤の予測スコア(Tス コア、Cスコア)を作成した。2つの進行卵巣癌データセットで、Tスコアが高い群ではタキサン使用群は不使用群に比して予後良好であった (GSE9891: p=0.001; GSE3149: p=0.013)が、Tスコアが低い群では両者の間に有意差がなかった。さらに針生検後にシスプラチン単剤治療を行った乳癌データセット (GSE18864)で、感受性群では抵抗性群に比してCスコアが有意に高かった(p=0.02)。さらにTスコアはThe Cancer Genome Atlasデータの卵巣癌遺伝子発現サブタイプのうち、Mesenchymal群で有意に高く、CスコアはProliferative群で有意に高かった (p<0.001)。以上より、Tスコアはタキサン感受性、Cスコアはプラチナ感受性を予測し、遺伝子発現マイクロアレイ解析によって卵巣癌の個別 化治療が可能となることが示唆された。現在我々は、オミックス情報を個別化治療に活かすために、解析基盤となるパイプラインを整えつつあり、その内容も紹 介する。
幡生あすか(大阪大学薬学部), 岡本晃典, 高木達也.
「脳血流画像に基づく機械学習を用いた疾患予測モデルの検討」

要旨 SPECT (single photon emission computed tomography) やPET (positron emission tomography) をはじめとする核医学診断は画像診断法のひとつであり、臨床において様々な疾患の診断に用いられる。新規トレーサーの開発や撮像システムの改良により取得 できる情報は増えており、脳血流変化を伴う疾患の早期診断を始め、種々の疾患の早期・鑑別診断に用いられている。
しかし、画像診断の分野でもいくつかの問題がある。例えば脳神経変性疾患については類似の症状を示す疾患の鑑別は時に困難である事や、画像診断を行う医師 の視覚や主観に依存する事が挙げられる。従って、より高精度かつ患者への負担がより少ない診断方法の開発は今も道半ばである。
この様な状況の中、診断のために取得される患者の画像データは医療現場における診療の中で生み出されるデータであり、情報として非常に有益である。我々の 研究室では確定診断が付与された脳画像を数値化したデータを用い、統計学的手法、特に機械学習の手法を用いて疾患予測モデルの構築を試みており、現在は座 標のグループ化や、代表値の選出方法を検討することにより、予測モデルの改良を行っている。
荒井ひろみ(東京大学情報基盤センター)
「個人情報の研究や医療での利活用のための課題」

要旨 研究や医療の現場では、個人ゲノムや医療履歴などの個人に関する情報を取り扱う機会が多くある。これらの情報の収集、分析や検索などは有用性が期待され る。一方で情報が流出すると個人に不利益を与えることが懸念されるため、安易に開示することは困難である。本講演では個人ゲノムやフェノタイプのような個 人のプライベート情報がどのように漏洩するかを数理モデルや過去の事例を紹介を通して概説する。さらに、そのような漏洩を防ぎプライバシを保護してデータ を利活用するための技術や制度の取り組みを紹介する。
小林宏彰(株式会社日本医療機器開発機構 / 東京大学大学院医学系研究科 救急医学専攻)
「救急・集中治療領域における生体情報の活用の重要性」

要旨 救命救急センターや集中治療室では、日々刻々と患者に関するデータが生み出され、もっとも”data rich”な環境であるが、残念ながらそのデータの活用については十分になされているとは言えない。生み出される情報を十分に活用することで、医療の質、 安全の向上を通じて、多くの患者、家族がメリットを享受すると考えられる。その一例として、患者情報の中でも、生体情報モニターの可能性ついて検討をす る。バイタルサインと呼ばれる、心電図、心拍数、体温などの情報を、連続的に計測するモニターは集中治療室では全ての患者に装着され、入室から退室までの 情報が記録される。バイタルサインは、文字のごとく、患者の状態について極めて重要な情報を提供し、救急・集中治療医の仕事は、この情報を把握することか ら始まる、と言っても過言ではない。そして、この情報を客観的かつ正確に把握し理解出来ないことによる、重症患者の見逃し、誤診、入院中の患者の状態悪化 などは後を絶たない。このような現状を実例も交えてご紹介し、同時に、国内外での新たな取り組みについて、特に情報処理という観点から、ご紹介します。
八谷剛史(岩手医科大学 いわて東北メディカル・メガバンク機構)
「ゲノムコホート研究における”異分野”連携」

要旨 医療現場の意思決定を支える統計学的なフレームとして、Evidence-based Medicine (EBM)がある。統計学の歴史の中にEBMを位置付けると、頻度主義とベイズ主義を組合せつつ、「臨床ガイドライン」を作成する方法論と考えられる。医 療と統計学という”異分野”は、R.A.フィッシャーとジェローム・コーンフィールドの”喫煙と肺がん”論争を起点として、データに基づいて意思決定を行 うためのフレームを形作るという偉業を成し遂げた、”異分野”連携の「超」成功例といえる。
ゲノムコホート研究では、EBMのフレームを踏まえながら、ゲノム・オミックス情報に係るエビデンスの創出と、エビデンスの活用が期待されている。ゲノ ム・オミックス情報に係るエビデンスの活用とは、医療現場やセルフメディケーションにおけるゲノム・オミックス情報の有効活用に他ならない。我々のグルー プでは、東北メディカル・メガバンク事業の試料・情報だけでなく、日本の様々なコホート研究と連携を行い、遺伝的リスクスコアの開発やDNAメチル化情報 を用いた発症予測法の開発に取り組んでいる。このようなゲノムコホート研究においては、医療統計学、遺伝統計学、バイオインフォマティクスの融合が必要不 可欠であると感じている。

10月30日(金) 15:45-17:15 第3会場

新しい微生物生態像の解明に向けたバイオインフォマティクス

高見英人(JAMSTEC)
五斗進(京都大学)

セッション要旨 次世代シーケンサーの登場による配列情報の爆発的な増加により、これまであまりバイオインフォマティクスを意識することのなかった生物学者も意識せざるを 得ない時代に突入してきた。最近では、人の健康や精神の安定にまで腸内細菌の関与が指摘され、地球温暖化や海洋酸性化と環境微生物群集との関連なども研究 されており、これらの様々な問題の解決と新たな研究分野の創生には、バイオインフォマティクスの新たな展開とそれによる貢献が期待されている。しかしなが ら、具体的な出口論が見えにくい環境分野とバイオインフォマティクス分野とは必ずしもうまく連携できていないのが現状である。そこで本企画セッションで は、微生物生態学分野でユニークな研究に携わる若手研究者が抱える生物情報処理に関する問題点とバイオインフォマティクスとの連携に期待する提言を含んだ 内容をプレゼンテーションしていただく。今回は、物質循環に関与する微生物群集の役割をメインテーマとしつつ、微生物生態学研究とバイオインフォマティク スとで既に連携、あるいは模索している例も紹介してもらいそのテーマをいかに発展させることができるかを議論したい。

15:45-15:50 趣旨説明

15:50-16:10
「微生物界の暗黒物質」: 環境オミクス情報と培養技術で解き明かすその存在と未知機能
玉木 秀幸(産業技術総合研究所 生物プロセス研究部門)

要旨 地球環境中には膨大かつ多様な微生物が存在しており、そのほとんど(99%以上)が、未だ人類が手にしたことのない未知なる生物であると言われている。こ うした未知微生物は極めて広範に(例: 深部地下2.5 kmから大気圏まで)棲息し、その数は1029-1030個に及んでおり、宇宙空間に数多存在する星の数(1021個)よりも桁違いに多いことから、近年 では未知微生物を宇宙物理学分野の暗黒物質問題になぞらえて、「微生物界の暗黒物質(microbial dark matter)」等と表している。21世紀に入り、この微生物界の暗黒物質の謎を解く一つの革命的な技術が誕生した。環境オミクス情報解析技術の誕生とそ の革新的な発展である。今日では、例えば1000種以上の微生物からなる複雑な生態系であっても、未知微生物を含むその構成種のゲノムを一つ一つ解読して 代謝・機能情報を推定し、これまで以上に深く環境中の未知微生物の実体に迫ることが可能になりつつある。そこで、本講演では、主に地球規模での炭素循環に 関わる未知微生物の生理生態機能に焦点をあて、環境オミクス情報解析技術で近年明らかにされた重要な学術的成果を概観しながら、微生物生態学分野において 生物情報学がいかに重要であるかを改めて理解するとともに、解決すべき現状の課題に触れつつ、今後、微生物界の暗黒物質の謎を解くために必要とされる生物 情報学-微生物生態学の新展開について議論したい。
16:10-16:30
水田微生物生態系の気候変動応答
大久保卓(農環研)

要旨 大気二酸化炭素濃度の上昇は、水稲の光合成を促進し、作物生産量を増加させるだけでなく、水田から放出される温室効果ガスメタンを増加させ水田生態系の物 質循環にも影響を及ぼすと予想されている。メタン放出量増加の要因として、水稲根からメタン生成微生物への有機物供給量の増加が考えられていたが、演者ら は、大気二酸化炭素濃度の上昇により、水稲根圏に生息するメタン酸化細菌の菌数が減少することを発見し、メタン放出量の増加が生成量の増加と消費量低下の 双方の結果である可能性を示した。水稲根圏には、メタノール等のC1化合物代謝能力を有する微生物も多く生息しており、大気二酸化炭素濃度上昇により減少 することも明らかになった。メタン酸化の減少によるメタノール供給量の低下が一因と考えられる。C1化合物代謝細菌は、窒素固定能を持つ細菌も多く報告さ れており、大気二酸化炭素濃度上昇が窒素固定量の低下をもたらす可能性も考えられる。このように、大気二酸化炭素濃度上昇の影響が微生物生態系全体に波及 することが明らかになりつつある。演者らは、上述の研究を既往研究からの推論と簡単な統計手法を頼りに進めてきたが、データ量増加に伴い、効果的な解析手 法の必要性を痛感している。微生物叢、遺伝子頻度、環境データから、物質循環、微生物間相互作用を推測する手法を参加者と議論したい。
16:30-16:50
完全長ゲノムの再構築による海洋ウイルス生態学の転換
吉田天士(京都大学大学院農学研究科)

要旨 2015年は細菌感染性ウイルス(ファージ)の発見から100年となる。かつて分子生物学の中心であったファージが、海洋に大量に見いだされ再び注目され ている。ファージは、宿主微生物への感染・溶菌を通じて、海洋物質循環に深く関与し、微生物多様性にも大きく影響を及ぼすらしい。演者らは海洋微生物の多 様性が、頻度依存的選択(環境に適応・増殖した微生物は被感染度も増す)と共進化(微生物によるファージ防御獲得‐ファージによる防御回避という軍拡競争 が起こる)の2つの並列過程で生じることを検証しようとプロジェクトを進めている。この過程でMiseqを用いた小さな海洋ウイルスメタゲノム(ビロー ム)から、期せずして多数の完全長ウイルスゲノム(最大190kb)を構築することに成功した。例えば古細菌ポリメラーゼを含むゲノムや鉄硫黄クラスター 合成遺伝子を含むゲノムといった新たなウイルスゲノムを構築した。また、リードマッピングによりこれら未知ウイルスゲノムの環境での出現頻度が明らかと なった。ウイルスには系統を反映する共通遺伝子がない、宿主由来遺伝子との区別が困難な機能遺伝子がある、極めて大きな割合のビローム遺伝子が登録配列に ホモログがない、ことが主にウイルス生態学のボトルネックとなってきた。完全長海洋ウイルスゲノムの再構築は、これらの障壁を取り払い、海洋生態系の理解 へ大きな進展をもたらすものと期待される。
16:50-17:10
バイオインフォマティクスから微生物生態へ
奥田修二郎(新潟大学)

要旨 近年のDNAシーケンサーの技術発展によりメタゲノム解析のような難培養微生物をも対象にした研究が可能になっている。さらにゲノムだけでなく、RNA、 タンパク質においても環境中の微生物に対して、オミクス的なアプローチで研究が進められつつある。環境微生物を扱う研究分野においても、このように取り扱 うべきデータ量が膨大になりつつあるのが現状である。こうした状況において、バイオインフォマティクスが担うべき役割は非常に大きい。そこで今回は、バイ オインフォマティクス的なアプローチで協力したいくつかの環境微生物の共同研究について紹介する。環境中に棲息する微生物叢を対象にしたものに加え、単離 された環境微生物微生物を対象にしたもの、また、次世代シーケンサーや質量分析といった手法の異なるものなど、時間の許す限り様々な共同研究の例について 紹介したい。微生物生態学分野とバイオインフォマティクス分野との今後の連携について、ここで紹介する研究例が少しでも役に立てばと期待する。

17:10-17:40 総合討論


10月31日(土) 15:00-17:40 第3会場

高校生物の中のバイオインフォマティクス

白井剛(長浜バイオ大学)
木下賢吾(東北大学)
川島武士(筑波大学)

要旨 近年の教科書改訂により、高校生物の内容は著しく高度になっている。バイオインフォマティクスに関連した項目も教科書に盛り込まれているが、背後に存在す るデータやその処理方法については、十分に説明されていない。生物学データの爆発的増加を受けてバイオインフォマティクスは生物学に必須の知識となりつつ あり、高校生にもそのことを理解してもらうことは重要と考えられる。また、十分な背景知識なしに導入された内容については高校の先生も教え方に苦労する局 面もあるとされる。この現状を少しでも改善するために、JSBiの人材養成・アウトリーチ活動の一環として、高校教員を対象としたチュートリアルを企画し た。これは、現在使用されている高校生物教科書から題材をとり、バイオインフォマティクスの背景を持つ一連の項目について、最新の(しかし高校授業でも利 用可能な)データベースやコンピュータアプリケーションを用いた実習形式の中で背景となる知識を解説し、実際の授業や指導に役立てていただくことを目的と するものである。